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企業法務トピックス

2019/09/25   企業法務トピックス  

役員等に対する責任追及

1. 役員等の責任

1) 会社に対する責任

取締役、監査役、会計参与、執行役又は会計監査人(以下「役員等」といいます。)は、会社の業務・経営に対しそれぞれ役割を有する立場にあります。そのため、会社と自己の利益が衝突する場合に守るべき規律が定められており、また、利益が衝突する場合に自己の利益を図る等自己の役割にそぐわない行為があったときは、会社に対し、生じた損害を賠償すべき責任を負います。
具体的には、以下のような場合に、役員等の会社に対する責任が問われることになります。
・利益相反取引についての、取締役会の承認と事後の報告
・競業取引についての、取締役会の承認
・報酬等の決定についての、株主総会決議
・任務懈怠(=善管注意義務、忠実義務違反)
・株主権行使に関する利益供与への関与
・違法な剰余金の配当

2) 第三者に対する責任

役員等がその職務を行うにあたって悪意・重過失があった場合、当該行為によって損害を被った者は、役員等に対し損害賠償を請求することができます。
ただし、役員等の任務懈怠によって会社が業績不振に陥った結果として生じた損害等については、債権回収ができなくなった会社債権者に対しては損害賠償責任を負いますが、株価下落によって資産価値が低下した個々の株主に対しては損害賠償責任を負いません。会社に対する関係で、責任を問われることになります。

2. 役員等の責任の免除

損害賠償責任の負担をおそれて、役員等の業務執行が萎縮したり役員等に就任する者がいなくなったりすることを防ぐため、会社法は、以下の要件等を充足する場合には、役員等の責任を免除することを認めています。

1) 全部責任免除

①任務懈怠責任、利益相反、株主権行使に関する利益供与への関与等に基づく損害賠償責任について、
②全部免除する旨の総株主の同意がある場合

2) 責任の軽減・一部免除

上場会社等株主が多い会社では、総株主の同意を得ることは困難であることから、より緩やかな要件で任務懈怠責任の一部を免除することができます。ただし、軽過失による責任に限られます。
ア. 株主総会決議による場合
①役員等が任務懈怠責任を負うべき事情が生じた後で、
②これについて一部免除する旨の株主総会の特別決議がされた場合
イ. 取締役会決議による場合
①特に必要と認めるときには取締役会の決議によって責任の軽減を行うことができる旨の定款の定めがあり、
②この定めに基づいて、実際に役員等が任務懈怠責任を負うべき事情が生じた後で、これについて一部免除する旨の取締役会議案の提出に監査役・監査役委員全員の同意があり、
③同議案を成立させる取締役会決議がされた場合
非取締役会設置会社においても、監査役設置会社であり、かつ、取締役が2人以上いれば、同様の一部免除をすることができます。

3) 責任限定契約

一部の役員等については、事前に、責任を負う範囲を確定しておくことができます。
①社外取締役、会計参与、社外監査役、会計監査人について、
②責任限定契約を締結できる旨を定款で定め、
③事前に責任限定契約を締結していた場合

役員等に責任があるかどうかの判断にあたっては、その者が自己の義務に反していたか、どの程度反していたかを評価しなければなりません。この評価にあたっては、問題となる行為が経営判断として著しく不合理であったかどうかという、極めて専門的な検討が必要です。
役員等の責任についてお悩みがありましたら、弁護士法人アステル法律事務所にご相談ください。

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