お知らせ
事業所報
2020/03/05
Author :アステル
緊急発行 企業のための 新型コロナウィルス関連Q&A
Q1 咳や倦怠感などの特定の症状を示した従業員について、新型コロナウィルスに感染していないことを確認できるまで自宅待機を命じたいと思っています。その場合、賃金などを支払う必要がありますか?
A 個別事案ごとの判断になりますが、新型コロナへの感染の可能性が合理的なものであれば、休業手当の支払も不要と考えられます。
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(1)賃金
雇用契約は、従業員が労働に従事し、会社がその対価として賃金を支払う契約です(民法623条)。従業員は、労働に従事した後でなければ賃金を請求することができません(民法624条1項)。そのため、会社は従業員から労務の提供を受けていなければ、原則として、賃金を支払う必要はありません。
もっとも、従業員が労務の提供をできなかった原因が、「会社の責めに帰すべき事由」によって生じている場合は、会社は賃金を支払わなくてはなりません(民法536条2項)。
新型コロナウィルスへの感染の可能性は、会社に帰責性があるとはいえず、賃金支払い義務はないものと考えます。
なお、例外的に、感染経路として業務中の罹患が疑われる等、従業員がそのような症状を発症した原因が会社に
ある場合には、会社の責めに帰すべき事由により労務の提供ができなくなったと言えますから、賃金支払い義務も免れないという点には注意が必要です。
(2)休業手当
ア 「不可抗力」による休業であれば休業手当は発生しないこと
労働基準法26条は、会社の責めに帰すべき事由により休業する場合、平均賃金の6割の休業手当の支払いを義務付けています。
もっとも、天災事変等の不可抗力に該当する場合には、会社の責めに帰すべき事由に該当するとは言えませんので、
休業手当を支払う必要はありません。ここで、不可抗力とは、①事業の外部で発生したもの、すなわち事業主の関与の範囲外のものであること、②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることができないものであることが必要です。
イ 感染が確認されるまで
(ア)労働者を個別に休業させる場合
例えば、厚生労働省「新型コロナウィルスに関するQ&A」でも示されている「相談・受診の目安」である下記に該当する場合で、産業医などの意見を聞き、また保健所などの相談の結果、自宅待機が望ましいとの見解が示された場合について検討します。
この場合、事業外の事由であり、政府の要請や感染拡大防止への社会的な取り組みであること、専門家への意見の聴取もしていること、厚労省の基準に合致していること等から、経営者として最大の注意を尽くしたとしても避けようのない不可抗力によるものであったと言えます。そのため、会社の責めに帰すべき事由によるものではなく、休業手当の支給は不要となります。
―記―
・風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続く場合(解熱剤を飲み続けなければならないときを含みます) ・強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある場合 ・風邪の症状や37.5度以上の発熱が2日程度続く場合 ・ 強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある場合 |
(イ)一律に休業させる場合
熱が37.5 度以上あること等、一定の症状がある労働者を一律に休業させる場合、使用者の自主的な判断で休業させるものと位置づけられます。会社の責めに帰すべき事由による休業に該当し、休業手当を支払う必要があります。
ウ 感染が確認された場合
新型コロナウィルスの感染が確認され、都道府県知事が行う就業制限により労働者が休業する場合は、会社の責めに帰すべき事由によるものではなく、休業手当の支給は不要となります。この場合、労働者に対しては、被用者保険から傷病手当金が支給される可能性があります。
エ 労働者が自主的に休業する場合
新型コロナウィルスに感染しているかどうか分からない段階での労働者の自主的な休業は、通常の病欠と同様に取り扱うことになり、休業手当を支払う必要はありません。
(3)なお、新型コロナウィルスの感染拡大防止策として、小学校等が臨時休業した場合等に、その小学校等に通う子の保護者である労働者の休職に伴う所得の減少に対応するため、正規・非正規を問わず、労働基準法上の年次有給休暇とは別途、有給の休暇を取得させた企業に対する助成金も創設されましたので、ご確認ください。
Q2 自治体や政府からの呼びかけにより、事業所を閉鎖しなければならなくなった場合、新型コロナウィルスに罹患していない従業員に対しても賃金などを支払う必要がありますか?
A 原則として、賃金及び休業手当の支給は不要であると考えられます。
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Q1同様に、会社の責めに帰すべき事由の存否を検討することになります。そして、会社の帰責性を判断するにあたっては、会社の業務の内容、自治体や政府からの呼びかけの切迫性の程度、新型コロナウィルスのパンデミックの経過、罹患した従業員の数、当該事業所における割合、罹患した経過などの具体的な事情を考慮の上、事業所を閉鎖することがやむを得ないと言えるかを検討するべきと考えます。
このような検討において、会社に帰責性が認められない場合には、会社の責めに帰すべき事由によるものとは言えず、賃金や休業手当は不要であるということになります。
Q3 感染のリスクがあるため出社を拒否している従業員に対して、出社命令を出すことはできますか?
A 可能です。
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雇用契約において、会社は、従業員に対して、債務の本旨に従った労務を提供するように求めることができます。したがって、従業員において、債務の本旨に従った労務提供を拒否している場合には、従業員に対して業務命令として適法に出社を命じることができます。
もっとも、その反面において、会社は、従業員に対して、感染リスクについても適切に配慮された環境で労務提供を受けることができるよう、安全配慮義務を負っています。そのため、会社としても、従業員が安心して労務を提供できるよう整備していくことが前提となります。
Q4 学校が休校になったため、在宅勤務をせざるを得ない従業員がおり、テレワークの導入を考えています。留意点などを教えてください。
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テレワーク勤務時の労働時間についても、会社は適切に管理する必要があり、時間外・休日・深夜労働がある場合は、所定の割増賃金の支払いが必要です。
もっとも、新たにテレワークを導入する場合に、新たな労働時間制度を導入しなくても、テレワーク導入前に既に労働者に適用されていた労働時間制度をそのまま適用することができます。また、在宅勤務において、労働時間を算定し難い一定の場合には、所定労働時間働いたものとみなす「事業場外みなし労働時間制」の適用も可能です。
始業・終業時間等の把握の方法は、あらかじめ、どのような方法をとるか等ルールを決めておくことが必要です。
なお、厚生労働省がテレワークについて、「テレワーク総合ポータルサイト」(https://telework.mhlw.go.jp/)で情報提供していますので、参考にされてください。
Q5 新型コロナウィルス感染防止のため、時差出勤制の導入を検討しています。留意点などはありますか?
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時差出勤制とは、始業時間を何種類か選択できるようにし、それに応じた所定労働時間を稼働するというものです。例えば、始業時間については午前8時、8時30分、9時というように選択決定し、終業時間についても、選択した始業時間に応じて、午前8時からの者は午後5時まで、午前8時30分からの者は午後5時30分まで、始業が午前9時であれば午後6時というように、あらかじめ定めた所定労働時間労働を労働させる制度のことです。したがって、時差出勤制では1日の所定労働時間が定められているため、始業の時間は選択できても、終業の時間が選択できないことになります。
始業時間・終業時間は、就業規則の絶対的記載事項ですので(労働基準法89条)、時差出勤制を導入するにあたっては、就業規則において、始業時間・終業時間のいくつかのパターンを定めておく必要があります。
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