労働法トピックス
2022/07/22 労働法トピックス 安全配慮義務
安全衛生管理体制
1. 労働安全衛生法の概要
労働安全衛生法は、職場における労働者の安全と健康を確保し、また、快適な職場環境の形成を促進することを目的として、事業者に対し、事業場における責任体制の明確化と自主的活動の促進措置を講じることを求めています。
事業者(事業を行う者で、労働者(労働基準法第9条)を使用するもの。労働安全衛生法第2条3号)は、労働安全衛生法が定める労働災害防止のための基準を守るとともに、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保すること、国が実施する労働災害の防止に関する施策に協力することが求められています(労働安全衛生法第3条)。
今回は、労働安全衛生法のなかから、事業者が整備すべき安全衛生管理体制についてご紹介します。
2. 安全衛生管理者の選任
1) 事業者は、事業場で常時使用する労働者の数に応じ、以下のとおり、安全・衛生を管理する者を選任しなければなりません。
ア. 常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業場
労働局長の登録を受けた者が行う講習を修了した者等を安全衛生推進者として選任し(労働安全衛生法第12条の2、労働安全衛生規則第12条の2、12条の3)、以下の業務等を担当させなければなりません(労働安全衛生法第12条の2・第10条1項、労働安全衛生規則第3条の2)。
①労働者の危険または健康障害を防止するための措置に関すること
②労働者の安全または衛生のための教育の実施に関すること
③健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること
④労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること
⑤安全衛生に関する方針の表明に関すること
⑥安全衛生に関する計画の作成、実施、評価及び改善に関すること
イ. 常時50人以上の労働者を使用する事業場
医師、歯科医師、労働衛生コンサルタント等の資格を有する者を衛生管理者として選任し(労働安全衛生法第12条、労働安全衛生法施行令第4条、労働安全衛生規則第10条)、上記①~⑥等の業務のうち衛生にかかる技術的事項を管理させなければなりません(労働安全衛生法第12条・第10条1項、労働安全衛生規則第3条の2)。
ウ. 常時1000人以上の労働者を使用する事業場
事業場でその事業の実施を統括管理する者を総括安全衛生管理者として選任し、上記①~⑥等の業務を統括管理させなければなりません(労働安全衛生法第10条、労働安全衛生法施行令第2条)。
なお、林業、建設業、運送業、製造業等では100人以上、電気・ガス・水道業、旅館業、自動車整備業、機械修理業等では300人以上の労働者を常時使用する事業場は、総括安全衛生管理者の選任が必要です(労働安全法施行令第2条)。
2) 建設業、運送業、製造業等、歴史的にみて労働災害が多く発生してきた業種では、上記のほか、特別の規定が多く置かれていますので、注意が必要です。
3. 安全衛生委員会
1) 安全委員会
林業、建設業、運送業、木材製造業、鉄鋼業、自動車整備業、機械修理業、清掃業等の事業場で、常時50人以上の労働者を使用する場合と、電気・ガス・水道業、旅館業等の事業場で、常時100人以上の労働者を使用する場合は、安全委員会を設置し、以下の事項を調査審議させ、意見を述べさせなければなりません(労働安全法第17条、労働安全法施行令第8条)。
・労働者の危険を防止するための基本となるべき対策に関すること
・労働災害の原因及び再発防止対策で、安全に係るものに関すること
・その他、労働者の危険の防止に関する重要事項
2) 衛生委員会
事業の種別を問わず、常時50人以上の労働者を使用する事業場では、衛生委員会を設置し、以下の事項を調査審議させ、意見を述べさせなければなりません(労働安全法第18条、労働安全法施行令第9条)。
・労働者の健康障害を防止するための基本となるべき対策に関すること
・労働者の健康の保持増進を図るための基本となるべき対策に関すること
・労働災害の原因及び再発防止対策で、衛生に係るものに関すること
・その他、労働者の健康障害の防止及び健康の保持増進に関する重要事項
3) 安全委員会と衛生委員会双方を設置しなければならない事業場では、安全衛生委員会1つを設置することで、2つの委員会の設置に代えることができます(労働安全衛生法第19条)。
4. 産業医
1) 選任
常時50人以上の労働者を使用する事業場では、産業医を選任しなければなりません(労働安全衛生法第13条、労働安全衛生法施行令第5条)。また、常時1000人以上の労働者を使用する事業場では専属の産業医を、常時3000人以上の労働者を使用する事業場では2人の産業医を選任しなければなりません(労働安全衛生規則第13条1項)。
また、労働者が50人未満の事業場についても、医師または保健師に、労働者の健康管理等の全部または一部を行わせる努力義務が課されています(労働安全衛生法第14条の2、労働安全衛生規則第15条の2)。
2) 産業医の業務
産業医の業務は、労働者の健康管理のため、健康診断、面接指導、ストレスチェック、健康相談、健康・衛生教育、健康障害の原因調査等を行うことです(労働安全衛生法第13条第1項、労働安全衛生規則第14条)。
事業者は、産業医に対し、産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報を提供する義務を負います(労働安全衛生法第13条4項)。
産業医は、労働者の健康を確保するために必要と認められるときは、事業者に対し、必要な勧告をすることができ、事業者はこれを尊重しなければなりません(労働安全衛生法第13条5項)。また、衛生委員会、安全衛生委員会を設置している場合、事業者は産業医の勧告やこれを踏まえて講じた措置の内容、措置を講じない場合はその理由等を、委員会に報告しなければなりません(労働安全衛生法第13条6項、労働安全衛生規則第14条の3)。
なお、事業者は、産業医に対し、その勧告等を理由として、解任その他不利益な取り扱いをしてはならないものとされています(労働安全衛生規則第14条4項)。
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