労働法トピックス
2024/01/15 労働問題の基本 労働法トピックス
経営者と労働者の区別
1 はじめに
労働関係法規における「労働者」と認められるかどうかは、①本人にどれくらい自由が与えられているか(使用者の指揮監督下において労務を提供しているか)、そして②「仕事の成果」に対して報酬を払っているか、という2点を主な要件として、様々な事情を総合的に評価し判断されることは、『労働関係法規における「労働者」の範囲』のコラムでご説明しました。
この2つの要件は、「使用従属性の要件」と呼ばれています。
このコラムでは、労働者性が問題となるもののうち、従業員兼務の取締役など、経営者との区別について、形式的な立場上は労働者と認められないことを前提に、例外的に労働者性が認められるためにどのような事情が上記の要件に影響するのかご説明します。(一人親方の大工など、個人事業者と労働者の区別が問題となる場合は、「個人事業者と労働者の区別」をご参照ください。)
2 指揮監督下における労務提供性が認められる要素
⑴ 取締役に選任された際の経緯
従業員から取締役に選任されたような場合は、取締役就任により従業員を退職扱いとされたかどうか(退職事由とする規定の存在や、退職金の支払いの有無、退職手続の有無等)、会社内での従来の立場や指揮関係の変更があったかどうかなどが、重要な要素となります。
⑵ 取締役としての権限や業務遂行の内容
また、取締役としての業務執行が認められるかどうか(法令上認められるかどうかだけでなく、代表取締役等から一部の業務執行を任されている場合)も重要な要素となります。例えば、取締役会への出席、役付き役員としての活動の有無、会社経営への関与の程度などが認められる場合には、労働者性を否定する要素として判断されるでしょう。他方で、業務執行に関する意思決定を全く行うことが出来ていない場合などは労働者性を強める要素となります。また、実際に本人が提供する労務の内容に、他の従業員と同様の業務に従事しているような場合は労働者性を肯定する要素となります(会社の規模等にもよります。)。
形式的な名称等で判断されるわけではなく、様々な事情を考慮することとなります。
⑶ 代表取締役からの指揮監督の内容
代表者からの指揮監督が、取締役間の序列に基づくものと評価されるような内容のものなのか、労働者に対するものと変わらないのかという点は指揮監督関係を推認する要素となります。
⑷ 拘束性があるか
勤務時間や勤務場所について、管理や拘束がある場合は、使用者の指揮命令を推認させることとなるため、労働者性を肯定する要素となります(管理監督者のような労働者との区別を踏まえて検討することになります)。
3 報酬の労務対価性が認められる要素
⑴ 会計上の処理
賃金として処理されているのか、役員報酬として処理されているかを基本として、さらには、従業員部分の賃金と取締役部分の報酬とが区別されているかなどが要素となります。
⑵ 他の従業員との違い
他の従業員と比べて報酬が高額か、諸手当の支給がどのようになっているか、勤務時間や欠勤等に関係なく支給されているかどうかが要素となります。
⑶ 取締役就任時に支給増額等があるか
従業員から取締役に就任した際に、支給額の増額がどの程度なされたかも考慮要素となります。
⑷ 労働保険・社会保険上の取扱い
このほか、雇用保険に加入している事情が労働者性を肯定する要素とされますが、個人事業者と労働者のコラムでも述べた通り、従業員以外の場合でもこのような処理は可能ですので、その経緯や従業員との差異などを踏まえて検討する必要があります。
4 まとめ
このように、労働者性を推認する方向に働く事情、否定する方向に働く事情というのは、個別具体的な事案によって様々です。
労働者性が問題となるようなトラブルが生じた場合は、ぜひ一度、弁護士法人アステル法律事務所にご相談ください。
また、当事務所では、顧問弁護士に関するご相談は、初回無料でお受けし、できるかぎり顧問弁護士に興味のある方により一層顧問弁護士制度を知っていただきたいと考えております。顧問弁護士制度に興味があるという方は、お気軽にご連絡下さい。
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