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労働法トピックス

2017/04/25   労働法トピックス   労災  

労災給付と会社の損害賠償責任

 

 労災保険給付には,「業務災害」と「通勤災害」があります。

 これらのうち,業務災害については,政府から労災給付がなされたとしても,使用者は,労働者からの民法上の損害賠償請求を受ける場合があります。労災給付は,精神的損害をカバーするものではなく,また給付額が定型的に定められているため,労働者の被った損害のすべてが補填されるわけではありません。そのため,使用者は,労働者から,その補填されなかった損害について,民法上の不法行為や債務不履行に基づく損害賠償請求を受けることがあるのです。

 なお,労災保険給付が年金として給付される場合でも,使用者は,年金前払一時金の限度で,将来の年金額分の損害賠償責任を免れることができるとされています(労災保険法64条1項)。

 

 この点,労働契約法5条は,「使用者は,労働契約に伴い,労働者がその生命,身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう,必要な配慮をするものとする。」として,判例が認めてきた安全配慮義務を明文化しました。なお,この安全配慮義務は,単に労働契約上の義務であるだけでなく,特別の社会的接触関係にある当事者間の付随義務であると構成されていますので,会社は,雇用関係にない下請会社の従業員や,派遣労働者からも,安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求を受けることがありえます。

 

 また,安全配慮義務の範囲は,健康配慮義務や職場環境配慮義務など広範ですし,仮に安全配慮義務違反が認められた場合,その賠償額は高額になる事案も多く存在し,使用者に厳しい判断がなされる傾向にあります。

 例えば,労働時間について,労働者が自発的に長時間労働をしていたとしても,それを容易に知ることができたという場合,労働時間を減らすための措置や,入館禁止や帰宅命令などの発令をするべきだったとした裁判例もあります。

 

 労働者の側は,使用者が決めた仕事や期限を守らなければならない立場にあるため,自らの判断で過重労働を解消することができないという考え方が前提になっています。そのため,使用者は,過重労働にならないよう配慮する義務を負っているのです。

 使用者には,適切に労働者の勤務を管理し,安全で快適な職場環境を整備することが求められています。

 

 

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