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事業所報

2023/07/14

著者Author :アステル

THE ASTER TIMES 2023.7 vol.37

広告規制チェック    

1 広告にまつわる昨今の動き

企業の広告活動として、紙媒体に加え、ホームページやSNSなどインターネットを利用したマーケティングが不可欠な時代となりました。広告は、企業にとって、商品やサービスの特徴やメリットを効果的、効率的にアピールでき、消費者にとっても商品やサービスを選択する1つの契機になっています。

もっとも、広告にまつわる法規制は様々存在します。景品表示法、特定商取引法、独占禁止法のほか、業種によっては個別の業法によって規制されているものもあります。

広告の記載内容に法律違反があり、行政機関からの指導等が行われた場合、企業にとってのレピュテーションリスクは極めて大きいものです。例えば、景表法違反には、措置命令や課徴金納付命令制度があり、企業名や違反内容等が公表されます。最近では、消費者庁が、大幸薬品に対し、除菌用品「クレベリン」に「空間に浮遊するウイルス・菌を除去」等と表示したことが景表法上の優良誤認にあたるとして、課徴金6億744万円を支払うよう命じた事例もあります。この事例では、同社の株主が、大幸薬品の代表取締役に対し、「クレベリン」の生産及び販売に関連して、代表取締役に善管注意義務及び忠実義務違反があったとして、95億9400万円を支払うよう株主代表訴訟を提起する事態にも発展しています。

2 アステル法律事務所の広告規制チェックの特徴

アステル法律事務所では、企業様より広告規制チェックのご依頼を承っております。

企業様が作成された広告の事前審査を行い、法律違反がある場合には修正の方向性について法的助言を行います。

広告審査経験が豊富な弁護士が、ビジネスの視点をもって広告規制チェックをいたします。広告規制チェックは、基本料金を11万円(税込)とし、広告物の内容、量に応じて個別にお見積りをさせていただきます。

3 広告規制セミナー

先日アステル法律事務所では、景品表示法にまつわるセミナーを実施いたしました。顧問先様は、アステル法律事務所の顧問先様専用ページより無料でアーカイブ配信をご視聴いただけます(詳細は本紙四面をご覧ください。)。アステル法律事務所では、広告規制に関する社内セミナー講師のご依頼も承っておりますので、ご興味をお持ちの企業様は、ぜひお問い合わせください。

東京オフィス 弁護士 石川琴子

 

無免許運転を理由として懲戒解雇を行うことはできるのか
~東京地判令和4年9月2日~

第1 事案の概要

原告は、平成5年頃、被告であるトヨタモビリティとの間で期間の定めのない雇用契約を締結し、営業職として勤務していた社員でした。しかし、運転免許の効力停止処分(以下「本件免停処分」といいます。)を受けていた期間中である令和元年12月4日、勤務店舗から約1.3km離れた商業施設まで被告の社用車を運転するという道路交通法違反を犯してしまいました(以下「本件運転行為」といいます。)。これを受けて、被告は、令和2年2月2日、本件運転行為が懲戒事由に該当するとして原告を諭旨退職とする旨の決定をし、原告に通知しましたが、原告は退職に応じない旨被告に表明したことから、被告は、原告を懲戒解雇(以下「本件懲戒解雇」といいます。)する旨の意思表示をしました。これに対し、原告は、本件懲戒解雇が無効であるとして、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認や未払賃金等の支払いを求めて、本件訴訟を提起しました。結論として、東京地裁は、本件懲戒解雇は無効であるとして、原告が被告に対し雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認し、原告が請求した未払賃金の一部の支払いを被告に命じました。

第2 本件の争点

本件の主な争点は、懲戒解雇の相当性でした。

第3 裁判所の判断(要約)

1 懲戒解雇の相当性

本件賞罰規定では、飲酒運転を懲戒事由として具体的に挙げたうえで、「業務時間内外にかかわらず」、「飲酒運転をしたとき」は訓戒、けん責、減給、出勤停止、解任又は降格とする旨を、「飲酒運転をして事故を発生させたとき」は諭旨退職又は懲戒解雇とする旨を規定し、事故の発生の有無によって諭旨退職・懲戒解雇と解任・降格以下の処分とを振り分ける一方、業務時間内の行為であるか否かはその要素とはしていないことを前提に、「著しい交通法規違反により、刑法に触れるとき」という解雇事由を適用して懲戒処分を行うにあたっては、公平性の観点に照らし、その趣旨を十分に勘案してその相当性を判断すべきであるとしました。

その上で、本件運転行為が、自動車の取扱いを業とする被告との信頼関係を著しく損なう非違行為であり、また本件運転行為を行うにあたっても、相当に軽率な点があったことは否定できないと認定しました。その一方で、本件運転行為により事故は発生しておらず、本件賞罰規定上、事故の発生を伴わない飲酒運転が懲戒解雇事由とされていないことに照らせば、懲戒解雇の相当性は慎重に検討せざるを得ないとして、本件運転行為が被告との信頼関係を著しく棄損する業務上の非違行為であるものの、本件賞罰規定上、業務時間内の行為であるか否かが飲酒運転に係る懲戒処分の量定を振り分ける要素とはされていないことに照らし、これを懲戒解雇を相当とする決定的な事由とすることは困難であると判断しました。

これに加えて、本件運転行為が約1.3kmを1回走行したにとどまること、本件運転行為により被告に明らかな損害が発生したとは認められないこと、原告が入社以来懲戒処分をうけたことがないこと等を勘案して、本件運転行為につき懲戒解雇を行うことは、懲戒処分の量定の均衡を欠くものとして、社会通念上の妥当性を欠き、懲戒権を濫用したものとして無効であると結論付けました。

2 まとめ

この裁判例から、無免許運転という一般的に重大な交通違反と認識されている事情を理由としても、懲戒解雇に踏み切ることには相当慎重にならないといけないことが分かります。

熊本本店 弁護士 井手 俊輔

遺産分割を放棄すると不利益があるかも知れません!

1 はじめに

「民法等の一部を改正する法律」(以下「新法」といいます。)が、令和5年4月1日に施行されました。この改正は、相隣関係規定、共有制度、相続制度の各見直しや所有者不明土地管理制度の創設を含み、みなさまの生活に大きな影響を及ぼすといわれています。今回は、このうち、相続制度の見直しについて、ご説明いたします。

2 特別受益

相続人の中に、被相続人から遺贈や生前贈与を受けたりした者がいた場合に、この相続人が他の相続人と同じ相続分を受け取るとすると、相続人間の公平を害します。そこで、民法は、相続人間の公平を図るため、遺贈や(婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として)生前贈与を受けた財産を「相続分の前渡し」と位置付けて、それらの財産を相続財産に加算するとともに、遺贈や生前贈与を受けた相続人の相続分を決めるにあたっては、そうやって受け取った財産を差し引くことにしています(903条)。

例えば、7000万円の財産を残して死亡した被相続人Aの相続人が妻B(法定相続分2分の1)と子C(法定相続分2分の1)である場合、Aが生前Cに1000万円を贈与していたとすると、相続財産は残された7000万円に生前贈与分の1000万円を加算した8000万円とされ、Cの相続分は4000万円(8000万円÷2)から生前贈与を受けた1000万円を差し引いた3000万円となります。

このように「相続分の前渡し」と位置付けられる財産のことを「特別受益」と呼んでいます。

3 寄与分

相続人の中に、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与(通常期待される程度を超えた貢献)をした者がいるときは、遺産分割にあたってその寄与を考慮することが、相続人間の公平に繋がります。そこで、民法は、相続人の中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者がいるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額からその者の特別の寄与の分を差し引いたものを相続財産とみなして相続分を算定し、その算定された相続分に寄与分を加えた額をその者の相続分とすることとしています。

例えば、7000万円の財産を残して死亡した被相続人に妻Bと子Cがいた上記ケースにおいて、Cに「特別の寄与」といえる被相続人の事業に関する労務の提供があり、それが被相続人の財産の増加に繋がっていて1000万円と評価されるとすると、相続財産は6000万円(7000万円-1000万円)とみなされ、Cはその2分の1である3000万円に「特別の寄与」として評価された1000万円を加えた合計4000万円を取得できることになります。

4 新法

新法では、相続開始から10年を経過した後にする遺産分割には、原則として、「特別受益」や「寄与分」が適用されないことになりました(旧法にはこのような期間制限はありませんでした。)。その結果、相続開始から10年を経過した後にする遺産分割においては、相続人は、原則として、各相続人の法定相続分を前提とした遺産分割を行わざるを得なくなります。

しかも、新法は、施行日(令和5年4月1日)前に相続が開始した遺産分割についても、遡及適用されることになっていて、「特別受益」や「寄与分」の適用期限は、相続開始の時から10年を経過する時と施行日から5年を経過する時のいずれか遅い方とされています。

違和感が拭えませんが、「母が存命中は父の遺産分割は控えるべきだ」と考えて分割を見合わせていた結果、「特別受益」や「寄与分」の適用を求めることができなくなってしまうかもしれません。
ご注意ください。

八代オフィス 弁護士 中松洋樹

 

 

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