労働法トピックス
2017/03/27 労働法トピックス 雇用契約
就労請求権の有無~労働者を働かせないことはできるか?
労働者は,労働契約に基づき労働する義務を負っていますが,反対に,労働者が使用者に対し働くことを求めることはできるのでしょうか。これは労働者に就労請求権があるかという問題であり,使用者が労働者を労働させなかった場合にそのような取扱いが違法か否かとして問題となります。
この点,労働が単に賃金獲得のための手段ではなく,自己実現や人格発展という目的を持つ行為であると考えれば,就労請求権も法的な権利として肯定されると考えられ,そのような有力な考え方もあります。
しかし,裁判所は,①労働契約等に就労請求権についての特別の定めがある場合,または,②労務の提供について労働者が特別の合理的な利益を有する場合を除き,一般的には労働者は就労請求権を有するものではないとしているようです。これは,労務提供の具体的な内容は,使用者の指揮命令によって初めて特定されることや,使用者に労務の受領を強制することが困難であることなどが理由とされています。
よって,労働者の就労請求権については,前述のような例外的な場合を除き,原則として否定されることになります。
もっとも,裁判所の判断も個別の事案により異なっており,大学病院に勤務する医師を10年以上にわたり臨床担当及び外部派遣担当から外し,臨床の機会を与えなかった事案について,違法な差別的処遇であるとして使用者に対して不法行為に基づく損害賠償を認めた裁判例(学校法人兵庫医科大学事件〔大阪高裁平成22年12月17日判決〕)もありますので,注意が必要です。
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