企業法務トピックス
2019/12/11 企業法務トピックス
合意による自己株式の取得について
1. 自己株式取得の規制
会社が、自己の発行済株式を株主から取得すること(以下「自己株式取得」といいます。)は、かつては原則として禁止すべきという考えが取られていました。
その理由は、株主への出資払戻しと同様の結果を生じるため、会社債権者を害すること、特定の株主だけに投下資本の回収を認めることになり、株主間の公平を害すること、反対派株主から株式を取得することにより取締役が自己の会社支配を維持する等、経営を歪める手段に利用される恐れがあること等が挙げられます。
しかし、特に上場会社株式については、財務戦略上の観点から機動的な取得を可能にするべきであるとする意見も強く、現行法では、規制を遵守すれば、自己株式取得が可能となっています。現在、自己株式取得は、相続等で分散しがちな株式を取得して会社の経営基盤を強化したり、事業承継を円滑に進める手段ともなりえたり等、多くの場面で用いられています。
以下では、株主との合意による取得(法156条以下)について、特に非公開会社で用いられる手続を念頭に置き、解説します。
2. 取得の決議
⑴ 株主全員に対し譲渡の勧誘を実施する場合
会社が株主との合意により自己株式を取得することは、剰余金の配当と同じく、株主に対する財産分配の一形態となります。したがって、株主総会決議によって、①取得する株式の種類・数、②取得と引換えに交付する金銭等の内容・総額、③株式を取得することができる期間(1年を超えることができない)を定めることを要します(法156条1項・2項)。
⑵ 「特定の株主」から取得する場合
会社が自己株式を特定の株主から取得する場合には、上記①~③の事項の他、その株主の氏名(名称)も決議(特別決議)することを要します(法160条1項、309条2項2号)。また、その決議をする場合、定款上、①~③の事項を取締役会が定める旨規定した会社でも、株主総会特別決議を経なければなりません(法459条1項1号)。
特定の株主から取得する手続が厳格に定められているのは、換金困難な株式の売却機会の平等を図ることや、グリーン・メイラーからの高値の取得を阻止する等の必要があるからです。
そして、会社からの通知(法160条2項、会社規則28条)により事前に当該決議内容を知った他の株主は、会社に対し、総会日の5日前(非公開会社においては3日前。定款でそれを下回る期間を定めることも可能です。)までに、特定の株主(売主)として自己を加えたものに議案を変更するよう、請求することが可能です(法160条3項、会社規則29条)。
3. 取得の実行
⑴ 株主全員に対し譲渡の勧誘を実施する場合
会社は、取得の都度、①取得する株式の種類・数、②株式1株を取得するのと引き換えに交付する金銭等の内容・数額(またはその算定方法)、③株式を取得するのと引き換えに交付する金銭等の総額、④株式の譲渡しの申込期日を定め(法157条1項・3項)、株主に対し、当該事項を通知しなければなりません(法158条)。
その通知を受けた株主は、その有する株式の譲渡しの申込みをしようとするときには、会社に対し、その申込みに係る株式の種類・数を明らかにすることを要し(法159条1項)、会社は、④の期日に、当該株主が申込みをした株式の譲受けを承諾したものとみなされます(法159条2項)。
⑵ 「特定の株主」からの相対取得
2⑵の株主総会決議をしたときは、会社は、3⑴①~④の事項を、当該特定の株主に通知しなければなりません(法160条5項)。その他の手続は、3⑴と同様です。
4. 違法な手続による取得の効果
上記手続に違反した自己株式の取得がなされた場合には、関与した取締役・執行役・使用人等には刑事罰が科され(法963条5項1号)、かつ、取得は無効と解されます。
ただし、違法な取得であることを、相手方(売主)が知らなかった場合は、取引の安全が重視され、会社は、無効を主張することができません。
自己株式取得は多くの場面で用いられる一方、法律上の手続を正確に遵守しない限り、刑事罰の対象となったり、自己株式取得自体が無効とされたりすることもあります。
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