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2019/12/13   企業法務トピックス  

組織再編行為について

 


1. 組織再編とは

会社が事業の一部を他人に譲渡したり、子会社を設立して事業の一部を移転したりする等、様々な形で、会社が事業の構成を変更することを、組織再編と呼びます。
組織再編行為は、大別すると、合併、会社分割、株式交換・株式移転に分かれますが、各手法によって、その特徴や、取るべき手続は様々です。
以下では、各組織再編行為の内容や手続きについて、簡単に概観します。

 

2. 組織再編の種類

⑴ はじめに
大まかには、下表の通り、すでに存在する会社が、他社の権利義務や株式を承継する手続(吸収型)と、新たに設立する会社が権利義務や株式を承継する手続(新設型)に分類できます。

 

吸収型

新設型

合併

吸収合併

新設合併

会社分割

吸収分割

新設分割

株式交換・株式移転

株式交換

株式移転

以下では、それぞれの手続の内容を簡単に概観します。
⑵ 合併
合併とは、2以上の会社が合一して1つの会社になることをいいます。
1社(存続会社)が合併後も存続し、合併により消滅する他の会社(消滅会社)から権利義務を一切承継するものを「吸収合併」といいます(法2条27号)。
これに対し、すべての当事会社が合併により消滅し、その権利義務一切を、合併により新たに設立する会社(設立会社)が承継するものを、「新設合併」といいます(法2条28号)。
特徴としては、消滅する会社の権利義務一切を、存続会社又は設立会社に包括的に承継されることが挙げられます(法750条1項・754条1項)。ノウハウや営業権・従業員等を引き継げますので、自社で事業を開始するよりもコストを抑えることができます。
⑶ 会社分割
会社分割とは、ある会社(分割会社)がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を他の会社に承継させることをいいます。
既存の会社(承継会社)が、分割会社の権利義務を承継するものを「吸収分割」といいます(法2条29号)。
これに対し、会社分割により新たに設立する会社(設立会社)が、分割会社の権利義務を承継するものを「新設分割」といいます(法2条30号)。
特徴としては、債務の承継に際して、当該債務の債権者の承諾が不要とされており、事業買収・再編を円滑に進める際に、非常に有益な手段となる点が挙げられます。また、合併と違い、一部の事業を切り離すこともできますので、効率的な経営を行うことができます。
⑷ 株式交換・株式移転
株式交換とは、ある株式会社(株式交換完全子会社)がその発行済株式の全部を他の会社(株式交換完全親会社)に取得させることをいいます(法2条31号)。
会社の発行済株式すべてを株主から譲り受けることは、多数の株主がいる会社では極めて困難です。しかし、株式交換によれば、株主総会による承認を得れば、反対派株主を含めすべての株式を取得可能というメリットがあり、他社の完全買収の手段として広く用いられています。
株式移転とは、1又は2以上の株式会社(株式移転完全子会社)が、その発行済株式の全部を新たに設立する株式会社(株式移転設立完全親会社)に取得させることをいいます(法2条32号)。
主に、持株会社を形成するときに用いられます。

3. 組織再編行為の手続について

下記で、組織再編行為の手続を概観します。厳密には、組織再編行為の類型により、異なる点もありますが、いずれもおおむね下記のような手続を踏むことになります。
⑴ 契約締結又は計画の作成
組織再編の種類に応じ、当事会社が組織再編契約(合併契約、吸収分割契約及び株式交換契約)を締結し、又は組織再編計画(新設分割計画及び株式移転計画)を作成することになります。
⑵ 組織再編に関する事前開示
吸収型の組織再編において、各当事会社は、吸収合併契約等備置開始日から効力発生日後6か月を経過する日まで(吸収合併の消滅会社は効力発生日に消滅する関係上、その日まで)の間、一定の事項を記載(又は記録)した書面(又は電磁的記録)を本店に備え置き、株主及び債権者の閲覧等に供しなくてはなりません(法782条・794条)。新設型の組織再編でも、同様の義務が課されています(法803条)。
これは、①株主に対しては組織再編の承認及び株式買取請求権の行使について、②債権者に対しては組織再編について異議を述べるか否か、判断の機会を与えるためです。
⑶ 株主総会の承認
組織再編契約・計画は、原則として、各会社の株主総会特別決議による承認を受ける必要があります(法783条1項・795条1項・804条1項・309条2項12号)。
⑷ 反対株主等の買取請求手続
反対株主は、会社に対し、自己の保有株式を「公正な価格」で買い取ることを請求する権利が認められています(法785条・797条・806条)。このためには、前記⑶の株主総会に先立って組織再編に反対する旨を会社に通知し、かつ総会で実際に反対の議決権を行使する必要があります(法785条2項1号イ・797条2項1号イ・806条2項1号)。
⑸ 債権者保護手続
合併・会社分割が行われる場合、当該手続によって影響を受ける債権者は異議を述べることができ、その場合、会社は、債権者を害するおそれが無い場合を除き、弁済、担保の提供などをしなければなりません(法789条・799条・810条)。
⑹ 効力発生
吸収型組織再編は、組織再編契約で定めた効力発生日に、新設型組織再編は、設立会社が成立する日(設立登記の日)に、それぞれ効力が発生します。
⑺ 事後開示手続
組織再編の効力発生後遅滞なく、組織再編に関する一定の事項を記載(又は記録)した書面(又は電磁的記録)を作成し、効力発生日から6か月間、本店に備え置いて、株主・債権者の閲覧等に供しなくてはなりません(法791条・801条・811条・815条等)。
これは、手続の適切な履行を担保する他、株主や債権者が組織再編の無効の訴えを提起するか否か判断する、資料提供の趣旨で定められています。

組織再編は、大規模な手続になる関係上、利害関係者も多く、各株主や債権者に対し、様々な救済手段が設けられています。後ほどトラブルが発生するおそれも高いと言えますので、手続を慎重に履践する必要がございます。
また、複雑な手続になりますので、弁護士を始めとした専門家が密に関与する必要性も高い分野です。組織再編をご検討の際には、弁護士法人アステル法律事務所にご相談ください。→https://www.aster-law.net/reservation/

 

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