トピックス
2020/10/07 新法・法改正・判例紹介トピックス 法改正
消費貸借
1 諾成的消費貸借契約
(1)契約の成立
改正前民法では、消費貸借契約は、対象となるモノ(目的物)の交付があって初めて効力が生じる契約(要物契約)とされていました。
しかし、実務では、金融機関が事業者に金銭を貸し付ける際などに、融資枠や融資条件を設定し、事業者が希望すれば、金融機関が一定の金銭の貸し付けを実行するという融資契約がなされており、判例も目的物の授受がなくとも合意のみで成立する消費貸借契約(諾成的消費貸借契約)の成立を認めていました。
そこで、改正法では、書面(電磁的記録を含む)で行う消費貸借契約に限って、目的物の授受がなくても消費貸借契約が成立するとして、諾成的消費貸借契約に関する規定が新設されています(改正民法587条の2第1項)。これに対して、書面によらない消費貸借契約については、従来どおり、目的物の交付がなければ契約の効力が生じないとされています(改正民法587条)。
(2)契約の解除・失効
書面により諾成的消費貸借が締結された場合、借主は、実際に貸主から消費貸借の目的物を受け取るまでは、契約を解除することができるようになりました(改正民法587条の2第2項前段)。これは、契約締結から実際の実行までに期間が空く場合などに、事後的に借入の必要性がなくなる可能性があることに配慮してのことです。
もっとも、諾成的消費貸借において利息を定めていた場合や、既に消費貸借契約の目的物を調達していた場合などは、貸主としては借主から一方的に契約が解除されると不測の損害を被る恐れもあります。そこで、貸主としては、借主からの解除によって損害を被った場合には、損害賠償請求ができるとされています(改正民法587条の2第2項後段)。
また、書面により諾成的消費貸借が締結された後、消費貸借の目的物が交付されるまでの間に貸主または借主のいずれかに破産手続開始決定がなされたときは、契約はその効力を失うと定められました(改正民法587条の2第3項)。
2 利息に関する規定の創設
改正前民法には、利息に関する規定はありませんでしたので、利息を請求するためには、その旨の特約が必要でした。また、改正前民法に規定こそありませんでしたが、利息が発生するのは、目的物を受け取った日以降と考えられていました。
改正民法では、これを明確にするべく、特約がなければ利息は請求できないこと、利息が生じるのは目的物を受け取った日以降であることが明文化されました(改正民法589条)。
3 期限前返済に関する規定
住宅ローンが典型ですが、返済の期限が定められていたとしても期限前に返済したいという借主のニーズは一定程度あります。こうしたニーズへの対応としては、改正前民法でも、期限の利益を放棄するということで対応されてきました。
改正民法では、趣旨を明確にするために、返還時期を定めた場合でも、借主はいつでも返還することができることを明文化しました。また、期限前弁済は、貸主にとっては、得られるはずであった利息を失うという側面もありますので、期限前返済によって損害を受けた貸主は、借主に対してその賠償を請求することができることとし、適用されるルールを明確にしました(改正民法591条)。
なお、期限前返済による損害については、これを被ったと主張する貸主において損害の発生や具体的な金額、損害と期限前返済の因果関係の立証が必要とされており、約定の返済期限までに予定されていた利息相当の金員が当然に損害になるものではないと考えられている点に注意が必要です。
4 経過措置
消費貸借契約の締結日が施行日(令和2年4月1日)よりも前か後かによって改正法が適用されるかどうかが区分されます。したがって、改正法の施行日前に諾成的消費貸借契約が締結されている場合には、同契約には、改正民法の規定の適用はなく、従来の判例法理や解釈で判断されることとなります。
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