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2021/08/26   新法・法改正・判例紹介トピックス   法改正  

共有物の賃貸借等

1.共有物への短期賃借権等の設定

1)改正経緯

旧法化においては、共有物に使用権を設定することは、基本的に持分価格の過半数で決することができると解されていましたが、どのような内容の使用権を設定できるのかは明確ではありませんでした。

 

2)改正内容

改正後

第252条4項

共有者は、前三項の規定により、共有物に、次の各号に掲げる賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(以下この項において「賃借権等」という。)であって、当該各号に定める期間を超えないものを設定することができる。

一 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等 十年

二 前号に掲げる賃借権等以外の土地の賃借権等 五年

三 建物の賃借権等 三年

四 動産の賃借権等 六箇月

民法252条4項の新設により、共有者は、持分価格の過半数による決定により、共有物に対し、一定期間の賃借権やその他の使用収益を目的とする権利を設定することができることが明確になりました。

設定できる期間は、民法602条の短期賃貸借と同じ期間とされています。設定できる権利の種類は、賃借権のほか、地上権及び地役権も含まれます。存続期間が20年以上とされている永小作権(民法278条1項)は対象外です。

 

3)上限期間を超えた使用権設定の場合

上限期間を超える賃借権等が設定された場合は、その契約は基本的に無効になると解されます。ただし、持分価格の過半数によって決することが不相当とはいえない特別の事情がある場合には、変更行為に当たらないという考え方も、法制審議会の議論で示されています。

例えば、共有物が業務用の貸ビルで、共有者が従来からビル運用による収益分配を主目的としており、共有者による自己使用が予定されていなかった場合に、賃貸借契約が管理行為に当たるとした裁判例(東京地裁平成14年11月25日判時1816号82頁)のようなケースは特別な事情に該当するとの見解が示されています。

 

2.共有物への借地権や借家権の設定

1)借地借家法が適用される借地権は持分価格の過半数では設定できない

借地借家法が適用される借地権の存続期間は、原則30年とされており(借地借家法3条)、民法252条4項の期間を超えてしまいます。

また、存続期間を制限したとしても、正当の事由があると認められる場合でなければ契約の更新について異議を述べることができず(借地借家法6条)、事実上長期間にわたって継続する蓋然性があり、共有者に与える影響は多大です。

これらの理由から、借地借家法が適用される借地権は、民法252条4項の適用はなく、共有者全員の同意が必要と考えられます。

 

2)借地借家法が適用される建物賃借権は持分価格の過半数では設定できない

同様に、借地借家法が適用される建物賃借権も、存続期間を制限したとしても、正当の事由があると認められる場合でなければ更新拒絶の通知や解約申し入れをすることができず(同法28条)、事実上長期間にわたって継続する蓋然性があり、共有者に与える影響は多大です。

そのため、借地借家法が適用される建物賃借権も、共有者全員の同意が必要と考えらえます。

 

3)民法252条4項で設定可能なもの

一般の借家権に対し、以下の場合については、事実上長期間にわたって賃借権が存続する恐れがなく、共有者に与える影響が大きいとは言えないため、民法252条4項の適用範囲に限って、持分価格の過半数で設定することができると考えられます。

 ・定期建物賃借権(同法38条1項)

 ・取り壊し予定の建物の賃貸借(同法39条1項)

 ・一時使用目的の建物の賃貸借(同法40条)

 

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