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2021/12/06   新法・法改正・判例紹介トピックス   法改正  

休眠登記の抹消手続の簡略化

1 はじめに

何十年も前に設定された古い登記が抹消されずにそのまま残っていることがあり、このような登記を休眠登記と呼びます。

休眠登記は、その内容が現在の権利関係と整合していないことが多く、不都合を避けるため抹消登記手続を要する場合が多くありますが、これには原則として登記義務者の協力が必要となります。しかし、登記簿上の情報が非常に古いものである関係上、登記義務者が所在不明であったり、法人であればすでに解散等していることも多く、これらの場合は不動産登記法に定められた特殊な手続を経る必要がありました。

しかし、現行法の手続は簡易とは言い難く、十分に利用されていなかったので、改正法ではこれらの手続の簡略化が行われました。

 

2 改正の概要

⑴ 登記義務者の所在が知れない場合

ア 現行法

現行法では、登記義務者の所在が知れない場合、公示催告の申立てを行い、除権決定を得た上で登記権利者が単独で登記の抹消申請を行う方法が規定されています(現行不動産登記法70条1項)。

公示催告とは、裁判所が公告の方法で当事者に権利の届出を催告する制度であり、一定期間経過後も届出が無ければ、裁判所は当該権利につき失権の効力を生ずる旨の裁判(除権決定)を行い、これにより単独で登記の抹消を申請可能となります。

もっとも、公示催告は「登記義務者の所在が知れない」ことを要件とし、これには転居先不明等により還付された登記記録上の住所宛ての郵便物、近隣住民からの聴取結果等を含めた調査報告書等の提出を要し、相応の手間を要するものでした。

イ 改正法

上記を踏まえ、改正法では「登記義務者の所在が知れない」場合の要件が緩和されることになりました。

具体的には、上記の公示催告及び除権決定の手続の特例として、地上権、永小作権、質権、賃借権若しくは採石権に関する登記又は買戻しの特約に関する登記であり、かつ、登記された存続期間又は買戻しの期間が満了している場合において、相当の調査が行われたと認められるものとして法務省令で定める方法により調査を行ってもなお共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在が判明しないときは、その者の所在が「知れない」ものとみなして、同項の規定を適用して除権決定を得ることができるようになりました(改正不動産登記法70条2項)。

上記の「相当の調査」については、今後法務省令で具体的な内容が定められることになります(令和3年12月時点)。例えば、登記簿上の住所における住民票の登録の有無やその住所を本籍地とする戸籍や戸籍の附票の有無、その住所に宛てた郵便物の到達の有無等を調査し、転居先が判明するのであればこれを追跡して調査すれば足りるものとし、現地調査までしなくともよいとする等の見方が示されています。

 

⑵ 買戻登記の抹消手続の簡略化

買戻登記がされている場合において、契約の日から10年を経過したときは、不動産登記法60条の規定に関わらず、登記権利者は、単独で当該登記の抹消を申請することができる旨の規定が新設されます(改正不動産登記法69条の2)。

なお、同規定では、登記義務者が所在不明であることは要件とされていません。民法上、買戻特約は売買契約と同時にしなければならず、買戻期間は10年が上限となるため(民法579条、同580条)、売買契約の日から10年を経過した買戻登記について更に所在不明の要件まで加えるのは過剰と考えられたためです。

 

⑶ 解散法人を登記名義人とする休眠担保権の抹消登記手続

ア 現行法

被担保債権が弁済等により消滅しても担保権の登記が抹消されず、登記がされてから長い年月を経た担保権の登記(休眠担保権)が、不動産の円滑な取引を阻害することがあります。このような担保権の登記を抹消する方法の一つとして、現行不動産登記法70条3項後段の休眠担保権の抹消登記手続があります。

もっとも、担保権者が法人の場合、この手続が利用できるのは、商業・法人登記簿に当該法人について記録が無く、かつ、閉鎖した登記簿も保存期間(20年)が経過して保存されておらず、その存在を確認できない場合等と非常に限定した解釈がされており、適用範囲が狭過ぎるという問題がありました。

イ 改正法

改正法では、上記手続の簡略化のため、登記権利者は、共同して登記の抹消を申請すべき法人が解散し、改正不動産登記法70条2項に規定する方法(上記⑴イ)により調査を行っても、その法人の清算人の所在が判明しないため、その法人と共同して先取特権、質権又は抵当権に関する登記の抹消を申請することができない場合において、被担保債権の弁済期から30年を経過し、かつ、当該法人の解散の日から30年を経過したときは、不動産登記法60条の規定に関わらず、単独で当該登記の抹消を申請することができることとなりました(改正不動産登記法70条の2)。

 

3 おわりに

以上の通り、休眠登記の抹消手続について、手続を簡略化する改正がされることとなりました。これにより、制度の利用が増えると予測されますが、簡略化されると言えど専門的な知識を要する手続であることに変わりは無く、特に施行当初は要件等の理解が困難で戸惑うケースも多いかと思われます。

お悩みのことがございましたら、弁護士法人アステル法律事務所にご相談ください。

 

改正後

第69条の2(買戻しの特約に関する登記の抹消)

買戻しの特約に関する登記がされている場合において、契約の日から十年を経過したときは、第六十条の規定に関わらず、登記権利者は、単独で当該登記の抹消を申請することができる。

 

第70条(登記義務者の所在が知れない場合の登記の抹消)

1 登記権利者は、共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在が知れないためその者と共同して権利に関する登記の抹消を申請することができないときは、非訟事件手続法(平成二十三年法律第五十一号)第九十九条に規定する公示催告の申立てをすることができる。

2 前項の登記が地上権、永小作権、質権、賃借権若しくは採石権に関する登記又は買戻しの特約に関する登記であり、かつ、登記された存続期間又は買戻しの期間が満了している場合において、相当の調査が行われたと認められるものとして法務省令で定める方法により調査を行ってもなお共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在が判明しないときは、その者の所在が知れないものとみなして、同項の規定を適用する。

3 前二項の場合において、非訟事件手続法第百六条第一項に規定する除権決定があったときは、第六十条の規定にかかわらず、当該登記権利者は、単独で第一項の登記の抹消を申請することができる。

4 第一項に規定する場合において、登記権利者が先取特権、質権又は抵当権の被担保債権が消滅したことを証する情報として政令で定めるものを提供したときは、第六十条の規定にかかわらず、当該登記権利者は、単独でそれらの権利に関する登記の抹消を申請することができる。同項に規定する場合において、被担保債権の弁済期から二十年を経過し、かつ、その期間を経過した後に当該被担保債権、その利息及び債務不履行により生じた損害の全額に相当する金銭が供託されたときも、同様とする。

 

第70条の2(解散した法人の担保権に関する登記の抹消)

登記権利者は、共同して登記の抹消の申請をすべき法人が解散し、前条第二項に規定する方法により調査を行ってもなおその法人の清算人の所在が判明しないためその法人と共同して先取特権、質権又は抵当権に関する登記の抹消を申請することができない場合において、被担保債権の弁済期から三十年を経過し、かつ、その法人の解散の日から三十年を経過したときは、第六十条の規定にかかわらず、単独で当該登記の抹消を申請することができる。

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