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2022/12/02 破産トピックス 破産手続総論
破産管財人とは
1 破産管財人が選任されるタイミングとその趣旨
破産手続を裁判所の決定により大きく分けると、①破産手続開始決定(債務者が支払不能であり破産手続開始の原因があるということを裁判所が認める決定)までの段階と、②破産手続廃止又は破産手続終結の決定までの段階に分けられます。そのうえで最後に、③免責制度による免責決定(最終的に残った債務の支払いを免除することを認める決定)の段階に移行します。
①から②までの間には、破産管財人という裁判所が選任する弁護士により、債務者の財産のうち破産財団を構成する財産を調査したり、換価したりしたうえで、各債権者に配当する手続が行われることが予定されています。
このため、裁判所は、①の破産手続開始決定を出す際、合わせて破産管財人を選任する決定を出すこととなります。
もっとも、裁判所が破産管財人による手続までは必要ないと判断した場合には、①と②を同時に決定し、破産管財人を選任しないまま破産手続自体は終了させ、裁判所による③の判断を残すのみとする同時廃止決定が出されます。
※破産手続きの流れについては、次の記事をご参照ください。
※①の破産手続開始決定の効果については、次の記事をご参照ください。
2 誰が破産管財人になるのか
破産管財人の適格性については、破産法上、裁判所がその職務を行うに適した者を選任するという規定があるだけであり(法74条1項、規則23条1項)、弁護士に限定されているわけではありません。しかし、実務上は、業務遂行に法律的専門知識が求められることから、専ら弁護士が選任されています。
また、破産管財人には公正中立性が求められることから、申立債務者の代理人弁護士が選任されることはなく、個別の事案において求められる業務の内容が考慮されたうえで、裁判所が他の弁護士を選任しています。
法人も破産管財人になりえますが、実務上は、大規模な事件であっても、特定の弁護士が選任されることがほとんどです。業務の内容によっては、裁判所が破産管財人を複数選任したり、破産管財人が裁判所の許可を得て破産管財人代理を選任したりして、複数人で業務遂行することがあります。
なお、破産管財人の氏名又は名称は公告され、かつ知れている債権者等に対して通知されます。
3 破産管財人の職務内容
(1)破産財団の占有・管理と調査
破産管財人は、①の破産手続開始決定時に破産者が有していた財産を、破産財団として管理処分する権限を有します。このため、破産管財人は、就職後直ちに、破産財団に属する財産の引渡しを受けて、財産を占有管理し、財産の散逸や劣化、隠匿を未然に防ぎます。
また、破産管財人は、財産を適切に把握し評価するために、帳簿等の書類その他の物件を検査したり(法83条1項)、裁判所の嘱託に基づいて転送された郵便物等を開披して内容を確認したり(法81条1項、82条1項)することができます。
不動産の管理においては、破産管財人が第三者による不法占有や動産の盗難を防止するため、当該不動産が破産管財人の管理下にあることを示す告示書が貼付されることもあります。もっとも、テレビドラマ等でよくみられる封印執行(法155条1項)は、実務上はほとんど必要とされず、行われていません。
自動車の管理においては、もし破産管財人の管理下で破産者等による運行を継続させ続けて事故が発生するようなことがあれば、破産管財人が運行供用者責任を負うことになってしまいます。このため、破産管財人は、早期に自動車本体の占有を確保して売却手続きを進めるか、財団放棄するかを判断することになります。
※破産財団の範囲については、次の記事をご参照ください。
(2)破産財団の換価
破産財団の換価については、破産管財人に裁量が与えられており、破産管財人としてはできるだけ迅速かつより高価に換価できるよう、換価処分を進めていくことになります。
換価処分を行うにあたっては、不動産の任意売却や事業譲渡、訴訟提起による債権回収等がありますが、原則としては裁判所の許可が必要です(法78条1項)。もっとも、100万円以下の価額の動産の任意売却等については、許可不要とされています(同3項、規則25条)。
不動産や商品在庫等については、抵当権等の担保が設定されていることも多いところ、このような場合、債権者は別除権者として、破産手続きによらずに回収を図ることができます。もっとも、実務上は、別除権者としては別途自ら回収のための行動を起こすのではなく、破産管財人において任意売却により換価した中から弁済を受けることを前提に、担保権の抹消のための協力に応じ、売却代金の一部が財団に組み入れられるという運用が行われています。
(3)否認権の行使
否認権とは、破産手続開始決定前にされた破産者の行為又はこれと同視される第三者の行為の効力を覆滅させる権利です。
破産管財人は、破産手続開始前の行為について、倒産状態にもかかわらず破産者から第三者に財産が移転される等、財産を減少させるような行為を認めた場合には、一定の要件の下、この効果を覆すために、否認権を行使することができます。
否認権は、否認請求による場合のほか、否認訴訟や抗弁として行使されることがあります。訴訟提起をするか否か等の判断は、破産管財人の合理的な裁量にゆだねられています。
(4)法人の役員の責任追及
法人の破産においては、破産に至る過程で法人の役員の事業執行について違法行為が見られることも少なくありません。
破産管財人は、法人の役員に対する損害賠償請求権を認めた場合、これを適切に行使し、破産財団の増殖を図ることになります。
なお、役員の責任を確定させる方法としては、訴訟提起のほか、争いが大きくない場合等は、役員責任査定手続(法178条)という手続も用意されています。
(5)事業継続
破産手続きは清算型の倒産手続きですので、破産手続開始決定後は事業が廃止されるのが原則です。もっとも、ごく例外的ではありますが、破産財団の増殖や維持の観点から事業の継続が有益な場合に、破産管財人が、裁判所の許可を得て破産者の事業を継続することができることとされています(破産法36条)。
対象となる破産者の事業については、個人、法人、営利・非営利を問いませんが、破産財団に属する財産に関する事業である必要があります。
(6)財団債権の弁済と破産債権の調査・確定そして配当
破産管財人は、前述のように破産財団を換価しつつ、随時、財団債権の弁済を行います。
そして、破産債権が確定すると、破産管財人は、配当表を作成して破産財団の配当を実施することとなります。配当にあたっては、裁判所書記官又は裁判所の許可を得る必要があります。
(7)自由財産の範囲の拡張
法人ではなく自然人の破産の場合、破産者やその家族の最低限度の生活を保障するため、一定の財産が法定自由財産として破産財団を構成しないこととされています(法34条3項)。
これに加え、裁判所は、個別の事情を考慮の上で自由財産の範囲を拡張することができることになっていますが、破産管財人は、自由財産の範囲の拡張が適当か否かについて、意見を述べることとされています(法34条5項)。
※自由財産の範囲については次の記事をご参照ください。
(8)免責に関する調査
裁判所は、免責制度のもと、破産者に免責不許可事由がないかどうか、あるとして裁量免責が適当かどうかを検討したうえで、免責決定を出すことになります。
免責に関する調査判断は、裁判所の職権で行われますが、破産管財人が選任されている場合、裁判所は破産管財人の調査報告を通じて情報を取得して判断するのが通常です(法250条1項)。
以上のように、破産管財人が選任され、破産管財人による調査や換価手続きが行われる事件においては、破産者側においても、管財人の業務が円滑に遂行されるよう、随時誠実に対応する必要があります。
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