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2023/08/22   個人再生   破産トピックス  

住宅資金特別条項に関する解説

1 住宅ローン特則(住宅資金特別条項)とは

 個人再生手続きについて解説してきましたが、破産手続きよりも個人再生手続きを選択する最大のメリットというべきものは、『自宅を処分せずに、住み続けながら債務整理を行うことが選択できる』という点です。

 詳しく言えば、個人再生手続きの中で、住宅ローン等(住宅資金貸付債権)については支払いを継続することで、自宅を処分せず維持したまま、住宅ローン以外の借金を整理することができます。

 このような個人再生手続きの住宅ローン等についての特別な取り決めを、「住宅ローン特則(住宅資金特別条項)」と言います。

 本稿では、「住宅ローン特則(住宅資金特別条項)」について、さらに詳しく解説します。

2 住宅ローン特則が利用できる場合とは

⑴ 住宅ローン特則を利用することができれば、ローン債務とその他の債務の返済条件を分けることができ、自宅に住み続けた場合でも経済的に立ち直る機会が与えられます。住宅ローン特則が利用できるのは、どのような場合でしょうか。

 

⑵ 民事再生法第10章で、「住宅資金特別条項に係る特則」が定められています。

 基本的なケースとしては、①個人再生手続き中で、②再生債務者(申立人)が対象となる住宅を所有しており、③実際に居住していて、④対象となる住宅に「住宅資金貸付債権」に関する担保だけが設定されている場合であれば、⑤その「住宅資金貸付債権」に該当するものについて、住宅ローン特則が利用できます(法198条1項。)。

 すなわち、①そもそも個人再生手続きに該当しない場合は利用できませんし、②③自分が所有していない物件や、居住していない物件には利用できません。④住宅ローン以外の抵当権が住宅に付されている場合にも利用ができないことになっています。

 これらをクリアした場合に、⑤「住宅資金貸付債権」に該当する住宅ローン債権などについて、住宅ローン特則が利用できるということになっています。

 上記は基本的なケースであって、他の条件によって住宅ローン特則が利用できない場合もあるので(法198条1項但書など)、住宅ローン特則の利用を検討される場合は弁護士にご相談ください。

3 住宅資金貸付債権に該当するもの

 「住宅資金貸付債権」とは、「住宅の建設若しくは購入に必要な資金(住宅の用に供する土地又は借地権の取得に必要な資金を含む。)又は住宅の改良に必要な資金の貸し付けに係る分割払いの定めのある再生債権であって、当該債権又は当該債権に係る債務の保証人(保証を業とする者に限る。以下「保証会社」という。)の主たる債務者に対する求償権を担保するための抵当権が住宅に設定されているものをいう。」と規定されています(法196条3号)。

 つまり、新築工事代金、土地や中古住宅の購入代金、リフォーム工事代金の支払いのためのローン等の借り入れで(分割して返済しているもの)、かつ抵当権が住宅に設定されているものが対象となります。

4 住宅資金特別条項の内容

 住宅ローン特則では、上記のように、住宅ローン等については返済しながら進めていくことになりますが、その返済の方法を変更しなければ再生計画を遂行していくことができないときには、住宅ローン返済についても変更することができる場合があります。

 ⑴ 正常弁済型(原則型)

 今後の返済については、従前のローン契約の約定通りに返済し、滞納してしまっている部分について再生計画で定める弁済期間(原則3年、最長5年)で返済するという形です。

 ⑵ リスケジュール型

 利息や損害金も含めて全額弁済することを前提に、住宅ローン契約の最終弁済期を最長10年、再生債務者が70歳を超えない範囲内で延長し、毎回の支払金額を減少させる形です。

 ⑴では十分に遂行できない時に検討します。

 ⑶ 元本猶予期間併用型

 ⑵で十分に遂行できない場合には、⑵のリスケジュールに加えて、再生計画期間内の元本の返済を一部猶予することを検討します。

 ⑷ 合意型

 通常の類型としては、上記⑴~⑶を検討することになりますが、住宅ローンの債権者の同意がある場合は、⑴~⑶とは異なる権利変更の内容を有する特別条項を定めることができます。債権者の合意が得られる場合は、債務の減免含む返済計画を作ることが可能です。⑶で対応できない場合は、債権者との協議を経て、合意型による必要があります。

5 住宅ローン残額が住宅価値よりも低い時の注意点

 小規模個人再生手続では、最低限弁済しなければならない金額(最低弁済額)があることは、他のコラムで述べた通りです。再生債務者は、基準債権から計算される最低弁済額か、「清算価値」のいずれか高い方を最低弁済額としなければなりません。

 ここで、注意が必要なのが、住宅ローン残額が住宅価値よりも低い場合です。住宅の価値から住宅ローン残額分を差し引いた価値は、「清算価値」に含まれるからです。

 例えば、住宅の価値が2000万円ある場合に、住宅ローンの残額が1000万円であれば、清算価値が1000万円と計算されることとなり、この場合の最低弁済額は1000万円ということになってしまいます。

 住宅ローン残額よりも住宅価値が高いと見込まれる場合は、手続選択時点で実現可能性を含めて検討しなければならないため、弁護士にご相談ください。

6 最後に

 住宅ローン特則の利用は、個人再生手続の中でも重要なポイントです。

 住宅を残しながらの債務整理を検討されている場合は、アステル法律事務所にご相談ください。

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