トピックス
2024/06/20 事業再生トピックス 分野別事業再生の留意点
出版広告業
1.経営不振の原因
出版業を営む企業が窮境に陥る典型的な原因としては
①電子化の進行により、紙媒体出版市場が縮小した
②一時的な売上改善のため、小売店に実売見込みの低い書籍を販売したが、数ヶ月後に返品され売上がマイナスとなった
③取引先の小売書籍店が閉業した
等が挙げられます。
広告業を営む企業が窮境に陥る典型的な原因としては、
①紙媒体メディアを主な領域としており、電子化の進行により市場が縮小した、
②紙媒体メディア市場が縮小し競合他社の受注競争が激化し、不採算案件が発生した、
③各種ソフトウェアやフリー素材の拡充により、広告業者への外注が減少した、
④インターネット広告がメイン市場になったことにより遠隔地の大手広告業者と競合しなければならなくなった
等があげられます。
2.事業再生に向けた取り組み
出版業においては、紙媒体出版市場が今後も縮小し続けることを前提に、収支改善を図る方法を模索することになります。具体的には、タイトル別に収支を見直し、紙媒体での出版継続を検討するケース、電子書籍への移行を検討するケース、不採算レーベル・ジャンルの縮小や撤退を検討するケース等の対応を模索することになります。
広告業においては、紙媒体メディア市場が今後も縮小し続けることとインターネットメディア市場が倍加的に拡大し続けることを前提に、安定した収益を得る方法を模索することになります。具体的には、不採算案件・発注先からの撤退を検討するケース、紙媒体メディアでの経験と実績に基づき、インターネットメディアの比重をあげるケース、安定した案件受注のため、納品広告の品質や納期対応について発注先の信頼獲得を図るケース等の対応を模索することになります。
3.事業再生の手法
再建型の手続とはいえ民事再生等の法的整理による場合には商取引債権者を含む全ての債権者を対象とすることになりますので、商取引上の信用不安から取引の継続に重大な支障を生じさせるおそれがあります。そのため、債権者を巻き込んだ抜本的な対応が必要となる場合でも、商取引債権者に影響を与えず、また、企業ブランドが毀損されにくい私的整理手続が望ましいといえます。
もっとも、私的整理期間中の資金繰りが維持できないケースや金融債権の調整のみでは抜本的な解決が図れないという場合などには、法的整理を選択せざるを得ないといえます。
この場合、再建型の法的整理としては民事再生手続が用いられることが一般的ですが、前述のとおり商取引債権者を巻き込むことになるため取引の維持に対する影響が否定できません。取引の継続を受け入れてくれたとしても、少なくとも当面の間は現金取引を要求されることが多いため、資金確保が課題となります。
出版業においては、紙媒体書籍の発行には、印刷業者や製本業者との取引が欠かせないことが多く、法的整理手続を取った後も取引を継続してもらえるよう、対応をあらかじめ検討する必要があります。また、倉庫を利用している場合や運送事業者に運送を委託しているケースでは、商事留置権を理由として、代金の支払いがあるまでは商品の引渡を拒絶されてしまうおそれもあり、注意が必要になります。これらの取引業者への代金の支払いについて、少額債権弁済の許可を得る等の対応が必要です。
広告業においては、競合他社が多いこと、タイムリーな納品が求められることから、発注先がただちに契約を解除し、今後の取引継続を拒絶されることがあります。また、下請業者がいる場合、信用不安により委託中の広告制作を解除される・遅滞されることや、今後の取引継続を拒絶されることがあり、納期の遅れや納品不能を招き、発注先の信頼を喪失することになります。
いずれの点についても、事業継続のため、対応をあらかじめ検討する必要があります。出版業の場合と同様に下請業者への請負代金の支払いについては、少額債権弁済の許可を得る等の対応が必要です。
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