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2024/06/20   事業再生トピックス   分野別事業再生の留意点  

卸売業

1.経営不振の原因

卸売業を営む企業が窮境に陥る典型的な原因としては
①小売業者のコスト削減志向により、取引先の小売業者が、卸売業者をより大規模な競合他社に変更した、小売業者が生産者・メーカーと直接取引したりするようになった
②取引先の小売業者が倒産し、売掛金が回収不能となった
③大口注文が突如取り消され、滞留した在庫の廃棄や値引販売を余儀なくされた
等が挙げられます。

2.事業再生に向けた取り組み

売掛金の請求・回収をこまめに行い、貸倒れ回避を徹底するケース、支払いが遅滞し始めた取引先の把握・取引継続判断を厳密に行うケース、商品毎の粗利率・回転率等を分析しなおし、発注管理を見直すケース、取引先への配送コスト削減を図るケース、競合他社がいない商品を独自に開発するケース等の対応を模索することになります。

3.事業再生の手法

再建型の手続とはいえ民事再生等の法的整理による場合には商取引債権者を含む全ての債権者を対象とすることになりますので、商取引上の信用不安から取引の継続に重大な支障を生じさせるおそれがあります。そのため、債権者を巻き込んだ抜本的な対応が必要となる場合でも、商取引債権者に影響を与えず、また、企業ブランドが毀損されにくい私的整理手続が望ましいといえます。

もっとも、私的整理期間中の資金繰りが維持できないケースや金融債権の調整のみでは抜本的な解決が図れないという場合などには、法的整理を選択せざるを得ないといえます。

この場合、再建型の法的整理としては民事再生手続が用いられることが一般的ですが、前述のとおり商取引債権者を巻き込むことになるため取引の維持に対する影響が否定できません。取引の継続を受け入れてくれたとしても、少なくとも当面の間は現金取引を要求されることが多いため、資金確保が課題となります。

卸売業を営む企業は、生産者・メーカー及び小売業者との良好な関係を維持できるかどうかということが再生可能性を左右しますので、対応をあらかじめ検討する必要があります。また、倉庫を利用している場合や運送事業者に運送を委託しているケースでは、商事留置権を理由として、代金の支払いがあるまでは商品の引渡を拒絶されてしまうおそれもあるため、対応をあらかじめ検討することが必要です。

卸売業について事業承継や会社分割等による事業承継を行う場合、取扱商品によっては、事業譲渡先が必要な許認可等を承継できるかどうかについて、検討する必要があります。例えば、酒類販売業許可・食肉販売業許可・魚介類販売業許可・乳類販売業許可については、事業承継を行う場合には改めて許可を取得しなければなりません。許可取得の難易度は許認可によって異なりますので、あらかじめ検討と準備が必要です。

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